動脈硬化と悪玉コレステロール
の関係が実証
酸化したLDL(悪玉コレステロール)が
動脈硬化を促進することが、
マウス実験で確認されたとのこと。
2008年7月1日付けの米国医学誌「Circulation」に、酸化LDL(低比重リポタンパク)が動脈硬化を促進することをマウス実験で確認した、との内容が発表されたとのこと。
(LDLは、「悪玉コレステロール」として知られているもの。)
これは、東北大学の片桐秀樹教授のグループが確認したものです。
片桐教授らは、高脂血症のマウスに、酸化LDLを血液中から運び出すたんぱく質を作る遺伝子を入れることで、血中の総コレステロールやLDLは減らさずに、酸化LDLのみを約1/3まで減らすことに成功したそうです。
そして、この遺伝子を入れたマウスと、入れないマウス(両方とも高脂血症)を比較した結果、遺伝子が入れられたマウスでは、動脈硬化の進行が止まり、通常のマウスと同じになったとのことです。
さらにこのマウスを詳しく解析した結果、酸化LDLが全身に酸化ストレスをもたらすことで、動脈硬化が引き起こされるというメカニズムが解明されたとのことです。
現在のところは、LDL全体の量を低下させる薬が主流(世界の薬剤で最大の売上とのこと)ですが、今後は酸化LDLのみを低下させる、より効果的な薬剤の開発が期待されます。
(参考)
・北海道新聞2008年7月26日朝刊30面
・東北大学、血中酸化LDLを低下させると動脈硬化の進行が完全に抑えられることを発見(日経プレスリリース)
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=192814&lindID=4
・研究室紹介(東北大学大学院医学系研究科・医学部のサイト内ページ)
http://www.med.tohoku.ac.jp/room/222/japanese.html
「リポ蛋白」(Lipoprotein)は、脂質が血漿中に存在する様態。
これは、通常は血液中に溶け込みにくい脂質の周囲が、アポ蛋白やリン脂質で覆われ、血液に溶けやすくなった状態です。
その一種「低比重リポタンパク」(LDL、Low Density Lipoprotein)は、肝臓から末梢(筋肉など)に、脂質を供給する役目があるそうです。
しかしこのLDLは、コレステロールを最も多く含むリポ蛋白で、これが増えすぎると、血管壁の細胞内に蓄積してしまい、動脈硬化を引き起こす原因となるとのこと。
そのため、LDLは一般的に「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
※対して、たんぱく質を多く含む「高比重リポ蛋白」(HDL、High Density Lipoprotein)は、血管壁に蓄積したコレステロールを取り除く働きがあり、一般に「善玉コレステロール」と呼ばれています。
LDL(低比重リポ蛋白)が、動脈硬化を促進する原因であること自体は、以前から判明していたそうですが、実験による直接的な確認は難しく、片桐教授らによるマウス実験で初めてなされたようです。
(参考)
・リポ蛋白 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%9D%E8%9B%8B%E7%99%BD
・[第一三共] リポ蛋白とは何? 目で見る病気の基礎知識<一般・患者向け情報>
http://www.daiichisankyo.co.jp/healthy/medemiru/hl/hl02.html
・北海道新聞2008年7月26日朝刊30面